大人の韓国+han暮らしまわり通信「小倉で見つけた海峡の縁」

2026年5月、北九州を訪れました。
小倉にある老舗百貨店がPOPUPイベントを企画してくださり、2週間の内2日間だけですが売り場に立ちました。Webの向こうのお客さまがわざわざ訪ねてくださったこともあり、初めてお目にかかったのですが見知らぬ土地での心細さは一気になくなりました。

小倉駅
小倉は九州の北端にあり、海を越えればすぐそこに朝鮮半島があります。釜山との距離は思っている以上に近く、港町として栄えてきた歴史の中にどこか親しさを覚える瞬間がありました。交錯する長い商店街の雑多な活気、新鮮な魚介が並ぶ旦過市場で聞こえる威勢のよい声や食堂の店主の親し気な空気感にチャガルチを思い起こし、「うちの百貨店は日本映画『MOZU』のロケ地で、なんと爆破されたんです」と百貨店のスタッフのお話に、そういえば釜山も『国際市場で逢いましょう』はじめ 『弁護人』やドラマ『パチンコ』などたくさんの映像作品が舞台になっているなと思い浮かべたりして。

小倉井筒屋
閉店後、夕日に浮かぶ小倉城を背にホテルへ向かいました。小倉の町にはかつて多くの人を受け入れてきた繁華街の名残が今も残っていました。飲食店から漏れてくる賑やかな声を聞きながら歩いていると、知らない街に来た時特有の高揚感と少しの孤独を感じるのですが港町独特の湿った空気に触れていると、初めて訪れた町なのに不思議と懐かしさのようなものも感じていたのです。

小倉城
昨年、金沢を訪れた時も歴史ある町並みや工芸の美しさに触れながら、どこかで韓国とのつながりを探していました。旅先でそうした感覚を抱くことは以前からありましたが今回の小倉でもまた同じ作業をしているのです。
室町~江戸時代に朝鮮通信使がこの海峡を行き来したという史実があります。大阪・関西万博で復元船が入港したニュースは記憶に新しいですね。遠い昔の出来事ですが長い時間をかけて生死をかけて外交と文化の橋渡しをしていたのだなと想像すると、今自分が立っている場所の見え方が少し変わって見えるのです。
また五木寛之氏の小説『青春の門』も思い出しました。北九州はかつては炭鉱の町でもあり多くの朝鮮半島出身の人々が働いていた歴史があります。小倉も重要なシーンで登場しています。ずいぶん若い頃に映画を見、強烈な印象を受けたのですが渡瀬恒彦さんが演じた金朱烈をもう一度見たくなりました。華やかな都市の姿の下に、ここにもこの土地の産業を支えた人々がいたのだなとしみじみ感じるのです。
旅をすると、いつもその土地と韓国との縁を探してしまうのです。映画や小説の記憶、港町の湿度、人の距離感。直接的な韓国文化を探しているというより、長い時間をかけて行き交ってきたゆかりのある人々の気配や、痕跡に惹かれているのかもしれません。
KOARIをご覧の皆様は、もちろん韓国が好きで何度も渡韓のご経験がある方がきっと多いと思います。韓国の町の中でもあちこちに日本を感じる風景をふと思い出されることでしょう。日本と韓国。どちらが先でも後でもなく、長い時間の中で行き来してきた人や文化の余韻のようなものなのかもしれません。そしてその瞬間、少しだけ淋しくなくて、少しだけ旅を豊かにしてくれるように思います。
次に訪れる土地でもきっとまた同じように見えない縁を探すと思います。
さあ、次はどこの町で、どんな縁を見つけるのでしょうか。楽しみでなりません。
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