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2017.03.22 05:14

KOARIスタッフの勝手にレビュー~イ・ビョンホン主演『シングルライダー』編~

アンニョンハセヨ!コアリ韓国オフィス スタッフA井です。

3月も下旬に差し掛かり、そろそろ本格的な春かなぁ?と待ちわびている今日この頃。
皆さまお元気でしょうか?

ソウルは、朝晩は気温が下がり肌寒くもありますが、日中はポカポカとした天気が続くようになってきました^^
またソウルにはスギがほとんどないため、超重度のスギ花粉症の私にとってはなんて快適な季節!!春ってこんなに素敵だったのねっ!!!(日本にいる頃は花粉症のせいで春が大っ嫌いでした…苦笑)

さてさて、話は変わりますが、個人的に“春がやってくる前”の空気感が好きな私。暗くて静かだった冬が終わりを告げて少しずつ日差しが明るくなり、ふとどこかに旅立ちたくなるようなそんな雰囲気とでも言いましょうか…。

本格的な春になると、ぱぁっと明るくなるのですが、その全開に明るくなる“春が来る前”のじわじわとくる爽やかさと言いますか…(え、意味わからないって?苦笑)

不定期連載中の“KOARIスタッフの勝手にレビュー”、今回はそんな暗さと明るさの間を行きかうかのような絶妙な空気感の映画をご紹介したいと思います!

こちら!

 

『シングルライダー(邦題:エターナル)』
シングルライダー

主演作が続々とヒット中の韓国を代表する演技派俳優イ・ビョンホン主演の最新作「シングルライダー」です。

*あらすじ*
彼が消えた
彼から全てが消え去った
証券会社の支店長だったカン・ジェフン(イ・ビョンホン)
安定した職場と優しい家族、それなりに成功した人生だと思っていた。
ある日、不良債権事件により全てを失った彼は、家族のいるオーストラリアへと向かう。
しかし、そこで新たな別の人生を準備している妻スジン(コン・ヒョジン)の姿を見て気軽に歩み寄れずに姿を隠すのだが…

完璧な家庭、消えた夫、誰も知らなかった彼の衝撃的な真実が明らかになる…

**

ここ最近、アクションや犯罪ものなど、刺激的な作品に出演することが多かったイ・ビョンホンが、2001年に公開された「バンジージャンプをする」以来約16年ぶりにメロジャンルの作品に出演したことでも大きな話題となりました。

この作品のポイントをいくつか挙げていきたいと思います^^

一つ目は、
刺激的な作品が多い韓国映画の中で、たんたんと静かに進んでいく
“ヒーリング的な要素を含んだ映画”
だということ。

***

妻と息子を教育のためにオーストラリアに送り、韓国で証券会社の支店長として働いていたジェフン(イ・ビョンホン)ですが、不良債権事件により全てを失ってしまいます。
その時に思い出すのはオーストラリアに送った妻と息子。家族に会いに行くために連絡もせずにふらりとオーストラリアへ旅立ちます。

 

シングルライダー

シングルライダー

 

と言うことで、作品の主な舞台となるのはオーストラリア。海がすぐそばにあり、ご近所との付き合いも残るのどかな街で静かに繰り広げられていくのですが、その街並みがとってもステキなんです。

とは言っても、華やかな欧米の雰囲気やリゾートな雰囲気!というわけではなく、どことなく哀愁の漂う生活感や現実味が溢れる中に、一つ一つの小物だったり、お部屋に差し込む日差しだったり、出演者たちが何気なく歩く街並みたちがとてもリアルで素敵なのです。

 

シングルライダー

このシーンは、実際にオーストラリアのオペラハウス前で撮影されたそう!
監督曰く、今回ここの撮影許可を取るのが一番大変だったのだとか!
コン・ヒョジンの白いワンピースとのオペラハウスの風景がとってもきれいですよね☆

 

シングルライダー

シングルライダー

 

外国での生活、というとなんだかきらびやかなイメージを持ちがちですが、あくまでもそこは“生活”。
リアルな生活が描かれているところが逆に心を打ちました。

**

二つ目は、
イ・ビョンホンがインタビューで”台本を読んだ時に運命を感じた”と言わしめた脚本の力と、
作品の持つテーマ力の強さ。

 

シングルライダー

 

先ほども触れましたが、妻と息子を語学教育のために海外に送り、自分は韓国に残ってお金を稼ぎながら妻と子供にお金を送るという“キレギアッパ”の姿が本作の大きなテーマでもあります。
キレギと言うのは韓国語で“雁”、アッパは“お父さん”の意。妻と子供を海外に送り、自分は家族にお金を送りながら韓国と外国を行ったり来たりするその姿を渡り鳥である雁になぞらえてこう言われています。

**

この“キレギアッパ”、実は韓国ではここ数年かなり問題視されている社会問題の一つでもあります。
韓国の加熱する教育、学歴社会が生み出したこの“キレギアッパ”。子供を思うが故の行為ではあるのですが、実際には一人韓国に残ってお金を稼いでは家族に送るものの自分自身は苦しい家計で生活もままならず…という孤独で厳しい生活に耐えきれず自殺する男性も。

また、子供の成長期に家族が共に過ごさないことによる夫婦間や親子間のすれ違いなども問題とされており、これらの問題も本作には投影されています。

自分にとって、そして家族にとって本当の幸せとはいったい何なのか
ということを映画を観終わった後に自然と自分に問いかけるような作品なのです。

 

シングルライダー

 

三つ目は、ずばり物語の“結末”。
家族のいるオーストラリアに向かったジェフン(イ・ビョンホン)ですが、全く別の人生を歩み始めている妻と子の姿を見て、なかなか直接会いに行けません。そこで初めてジェフンは自分、そして家族にとって本当の幸せとはいったい何なのか、と言うことを考えることになるのですが、その後に待ち受けている結末が、もうこれは見て頂くしかありません…!

 

**

 

韓国には“반전(パンジョン)”という言葉があります。
直訳すると反転なのですが、皆が「え~!!」と驚く展開が起こった時に良く使われるのですが、
これは日本語で言うと“大どんでん返し”のようなもの。
(わかりやすく言えば、惹かれ合った二人が実は生き別れの兄妹だった!など)

ドラマや映画などでよく見る“パンジョン”ですが、この「シングルライダー」でも最後にまさかの結末を迎えます。

 

シングルライダー
”彼の元から、全てが消えた”

 

シングルライダー
”妻と息子をここに来させておきながら、
2年もの間一度も気になったことがありませんでした”

 

シングルライダー
”すごく良い取引にはいつも嘘がある。
僕も自分の仕事を疑ったことはなかった”

 

**

 

この“パンジョン結末”はどの作品でも賛否両論を呼ぶのですが、本作でもそれは同じ。
ネットなどでこの結末について様々な議論が行われました。
しかし、最終的には“現代社会が抱える問題”“幸せとは何なのか”と言うテーマに落とし込まれるという点ではこのパンジョンは今の時代に必要な結末だったのかもしれないと思います。

 

最後のポイントは何と言っても俳優達の名演技!

 

本作のイ・ジュヨン監督が「まさかイ・ビョンホンさんがこの作品に出演してくれるとは思わなかった」と語っていたのですが、実はどこかミニシアター系の雰囲気が漂う本作にイ・ビョンホンという超大物俳優が出演することに少し違和感があったのも確か。

しかし、彼の演技には見る者をストーリーにぐいぐいと引き込む力があり、また彼の流す涙には見る者全てを無条件に説得させてしまう表現力が。
「ああ、この映画はイ・ビョンホンでなければならない映画だ」と確信してしまいました。

 

また、妻役を演じたコン・ヒョジン、そしてオーストラリアで出会うバックパッカーの女性役を演じたアン・ソヒ、そしてオーストラリア人の俳優たちまで、全てがこの作品に出演すべくして出演していると思いました。愛犬役で登場する“チチ”までもです^^

 

シングルライダー

コン・ヒョジン

 

 

シングルライダー
アン・ソヒ

 

 

シングルライダー
キュートすぎるチチ…!!!

慌ただしい日々に疲れた私たちに、しばしの休息と、そして自分にとって本当の幸せとはいったい何なのかを今一度思い返させてくれる「シングルライダー」だったのでした。

そんな私の勝手にレビュー評価はこちら!

ふと自分の人生を振り返る度               ★★★★☆
イ・ビョンホン、やっぱりあなたの演技は最高だ!度    ★★★★★
これは一人で観るべき映画度               ★★★★☆
劇中登場する愛犬チチに胸がキュンキュン度        ★★★★☆

総合                          ★★★★★