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2015.09.07 11:00

[コラム] 編集者目線で見る雑誌『MAXIM』回収事件

 

 

MAXIM

 

韓国の男性ライフスタイル誌である『MAXIM』がやらかしてしまった。出版社にとっては、一番やらかしてはいけない“自主回収”をさせられるハメになったのだ。

問題となったのは、読者の方もご存じの通り、「性犯罪を美化しているのでは?」と捉えられてしまう表紙。悪役俳優として名高い名優キム・ビョンオクを配し、犯罪ノワール映画をイメージしたそうだが、その演出方法がいけなかった。拘束された女性と思わしき足がぬぼーっと、トランクからはみ出ているのである。

自主回収する以前の公式文書では「映画などで作品のストーリー展開や雰囲気を伝えるために演出するシーンのように、今回のグラビアの流れを、圧縮的にお見せするため描いた犯罪のワンシーンを劇的に表現している、と受け入れていただければ幸いです」と発表したが、やはり、雑誌で演出するには、ちょっとハードルが高すぎたようだ。表紙は静止画であり、かつ、その一面からストーリーを読み取ることができるのはプロであるカメラマンや編集者のみ。読者は撮影の設定もストーリーも何にも聞かされていないのだから、いきなり静止画である写真を“バンッ”と見せられて、そこから読み取れというのは、中々、難しいものだ。
 

私も雑誌のグラビア編集を通し、カメラマンと打ち合わせするときに必ずイメージ設定をして、撮影に臨むのだが、やはり話題になってほしいがために、いつもギリギリの勝負をする。話題になると、非難を浴びるのは紙一重なのだ。
この編集者を擁護するわけではないが、この編集者の気持ちもわからなくはない。気持ちが突っ走りすぎたのだ。その気持ちにストッパーをかけるデスクなり、編集長さえいれば、いい塩梅の作品に仕上がっていたとは思うのだが(話題になるのかどうかは別として)。

しかし『MAXIM』には、残念ながらそのような人物はいなかったようだ。公式文書でも編集長名義で「犯罪ノワール映画に登場する悪人に設定したいという意図により、編集部で演出したグラビアです(中略)性犯罪的要素はグラビアのどこにもありません(中略)性犯罪を性的ファンタジーに美化したといったことはありません」と、抗っていたのだが、そんな編集者たちの思いは一般人に伝わるわけがない。

その後も非難轟々であえなく玉砕。自主回収を避けては通れなかったのだ。そして、その傷は深く(謝るなら、最初から謝っておけばよかったものを)、自主回収・謝罪文だけでは読者の気持ちは収まらず、すでに販売された収益を女性人権団体に寄付することになったのである。

THE FACT JAPAN|中西美穂
「週刊女性」、「週刊文春」の編集・記者を経てフリーライターに。専門は韓流。大学卒業後、韓国の高麗大学付属語学堂へ留学し、韓国の魅力にはまる。著書「プチ韓国新大久保完全ブック」。

 

 


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